PD-1は、TおよびB細胞に発現する免疫グロブリン様レセプターとして同定され、生理的なリンパ球の活性化の後、病的な自己免疫の発症を抑制するキー分子であると考えられている。しかしながら、CD4(ヘル パー)およびCD8(キラー)T細胞、そしてB細胞という、個別の免疫担当細胞におけるPD-1の詳細な機能解析は途上である。研究期間の初年度となる19年度には、抗原ペプチドを投与した2CPD1KOマウスとコントロールの2Cマウス(2CPD1WT)を個体レベル、細胞レベルで比較し、CD8T細胞のアナジー誘導に関わる要素を探索した。結果、アナジー抵抗性であった2CPD1KOマウスでは、血清中に多量のIL-2が検出され、これを中和することにより2CPD1WTと同じく、アナジー誘導が起こった。IL-2は、メモリーT細胞の形成に不可欠であるサイトカインであり、これが、T細胞の不応答性の獲得にも関わる、PD-1のターゲット因子である可能性が示唆された。また、マイクロアレイを用いた細胞レベルでの発現遺伝子比較により、非常に少数の遺伝子が、アナジー感受性、抵抗性細胞で違うことがわかった。現在、RT-PCRでも再現が取れた遺伝子について、レトロウイルスによるT細胞への導入を行い、機能解析をおこなっている。
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