<研究の目的> 申請者らが同定したペア型レセプター(PILR)は、樹状細胞に発現する抑制化レセプターであるが、そのリガンドとしてT細胞上のCD45を認識することを質量分析解析により明らかにした。CD45はノックアウトマウスの解析などより、リンパ球の活性化制御および分化に重要な分子であるが、現在までに機能的なリガンドは明らかにされていない。しかし、PILR-Igキメラ分子は、CD45トランスフェクタントに非常に強く結合した。したがって、PILRとCD45の相互作用を中心に研究を推進することにより、PILRを介した新たな免疫制御機構が明らかになることが期待できる。PERが自然免疫と獲得免疫との相互作用にどのように制御しているかを解明することを目的とする。 <平成20年度の研究成果> CD45-PILRの相互作用によって惹起される免疫応答の解析を行った。CD4およびCD8 T細胞への固相化刺激の結果では、PILR-Igの固相化によりコントロール-Igキメラ分子と比較して、CD8T細胞の増殖および活性化マーカーの顕著な増強が確認された。一方、PILR-Igキメラ分子と結合しないCD4 T細胞では全く差が認められなかった。さらに、抗原特異的CD8^+ T細胞への抗原提示におけるPILRの役割についても検討した。H-2K^bおよびPILRを恒常的に発現させたCHO細胞を抗原提示細胞として用いることで、OVA特異的CD8^+T細胞の細胞増殖を測定した。その結果、PILRを共発現させることによりOVA特異的CD8^+T細胞の増殖が促進され、PILR阻害抗体を添加した場合PILR発現に伴う増殖促進は完全に消失した。したがって、抗原提示の場においてもPILRはCD45を介することでCD8^+ T細胞の増殖を促進していると考えられる。以上の結果より、PILRはCD8 T細胞上のCD45と結合することにより細胞増殖および活性化を正に制御させる働きがあると示唆された。今後は、PILRとCD45を中心に研究を推進することにより、シグナル伝達を含めた新たなCD8 T細胞およびCD4T細胞の免疫制御機能について明らかにする予定である。
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