研究課題
研究代表者は、走化性因子に応答した好中球の遊走において、先導端においてDOCK2が集積し、その下流でRacの活性化ならびにアクチンの重合が促進されることを既に報告している。本研究課題では、走化性因子の刺激に応答してDOCK2が先導端に集積する分子機構を解明することを目的としている。従来、DOCK2の先導端への集積には、ホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)に依存するといわれてきたが、好中球におけるPIP3産生を担うPI3キナーゼγを欠損した好中球においてDOCK2の動態を観察したところ、DOCK2の細胞膜への移行は障害されていたが、先導端への集積はほぼ正常であった。したがって、DOCK2の細胞内動態制御へのPIP3の関与は部分的であると考え、様々な阻害剤の新剤下で好中球を走化性因子で刺激し、DOCK2の細胞内動態を観察した。その結果、遊走中の好中球において、ホスホリパーゼD(PLD)の阻害剤である1・ブタノールにより、DOCK2の先導端への移行が著しく阻害された。同様に、好中球様に分化させた細胞株であるHL60において、PLD1をRNAiでノックダウンしたところ、走化性因子に応答した局所でのアクチン重合が障害されていた。また、1・ブタノールの存在、あるいはPLD1のノックダウンにより好中球の遊走能が低下することも示された。一方、HEK293T細胞において膜局在性のPLDであるPLD2とDOCK2を共発現させると、PLD2活性に依存したDOCK2の膜移行が観察された。以上のことから、走化性因子に応答した好中球の遊走において、DOCK2の先導端への集積にあたって、PLDとその産物であるホスファチジン酸が重要な役割を担っていることが明らかになった。
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