リンパ球の分化段階は、抗原レセプター遺伝子の再構成や細胞表面マーカーで厳密に規定され、多くの細胞表面分子あるいはサイトカインなどの液性因子がリガンドとして機能する。しかし一方で、リンパ球の分化・成熟を制御する重要なレセプターでありながら、リガンドが同定されていない受容体も多数存在する。その一つがプレB細胞受容体(Pre-BCR)であり、H鎖遺伝子再編成の停止(対立遺伝子排除)、細胞増殖の誘導、あるいは軽鎖(L鎖)遺伝子再編成の誘導など、B細胞の初期分化に重要な役割を担っている。しかし、リガンドの必要性を含めPre-BCRシグナルを惹起する分子メカニズムに関しては、未だ決定的な証拠が得られていない。そこで本研究では上記の未解明な分子メカニズムを申請者らが開発、応用してきたスクリーニング及びクローニングシステムを基に明らかにしていくことを目的とした。 ・12量体Fcγキメラ分子を用いたPre-BCRリガンドの探索 抗体のFcγ領域と解析目的である分子を融合させた可溶型Fcγキメラタンパクは、リガンド分子との結合を確認することが能である(Shiratori et al. J. Immunol. 2005)。しかし、抗原・抗体複合体に比べると、その結合親和性は非常に低く、2量体である通常のFcgキメラ分子を用いた解析ぼ困難を伴う場合が多い。私達は、Fcγ領域のC末端にIgAの一部配列を追加することで12量体を形成させた、結合親和性の非常に強いFcγキメラ分子を作成毛、通常の2量体では検出不可能なNK細胞レセプターとそのリガンドのクローニングに成功した(Shiratori et al. J. Exp. Med. 2004)。そこで、本研究でもPre-BCRの細胞外領域に対して12量体Fcγキメラ分子(Pre-BCR-FcγA)を作成し、リガンドを発現する細胞のスクリーニングを試みた結果、一部のストローマ細胞にリガンドが発現している可能性が明らかとなった。
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