TLRは、微生物の構成成分を認識することにより、侵入する病原菌に対し、初期の免疫応答を引き起こす重要な役割を担っている。TLRによる免疫反応の収束において、TGF-β1が複数あるユビキチン・プロテアソーム系のうち、何がMyD88のユビキチン化を誘導しているのかを検討した。具体的な実験系としてマクロファージ由来細胞株および上皮細胞由来細胞株を用いてTGF-β1処理を行い、細胞内でのシグナル伝達機構およびMyD88以外のTLR関連分子への影響について検討した。 本研究の目的はTGFβ1によるMyD88のユビキチン化に着目しTLRのシグナル伝達機構について包括的に検討することにある。 TGF-β1は複数のTLRのシグナル伝達経路において様々な制御作用をもたらすと考えられる。TGFβ1によるユビキチン・プロテアソーム機構を解析し、分子機序を明らかにすることは、TGF-β1の免疫制御システムに関し理解を深めるにとどまらず、感染に伴う様々な疾患に対するより良い治療法の確立の足がかりとなり、また、より効果的で安全なTGF-β1による炎症反応の制御を推進する上で重要である。 初年度、我々はHELa細胞においてTGFベータ1によってCpG誘導性IRF7の発現とリン酸化が抑制されることを見いだした。また、この抑制にはプロテアソームであるTRAF6が関与していることを明らかにした。 本年度、IRF7分子のK63リジンサイトが本分子の活性化に重要であることから、リジンサイト変異プラスミドを作製し、TGF-ベータ1の関与について検討した。 TGFベータ1がTLRミグナル伝達系関係関連分子との相互作用において生体防御に必要な炎症作用と抗炎症作用を制御していることを示した。本研究結果は日本免疫学会で報告している。
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