昨年度の研究で作成したDPCを用いた医療費の評価モデルを用いて、ICUで獲得した院内感染とICU以外の病棟で獲得した院内感染に関する医療費等の差異を検討した。 ICU以外で院内感染を合併した患者における医療費の平均(出来高払いで算定)は、約698万円であり、一般的な入院経過であったと考えられる平均在院日数で退院した同一DPCコードの患者の医療費(約408万円)と比較した場合、院内感染による医療費が約290万円増加していた。このうちの約147万円は医療機関の負担、残りの143万円は社会(保険者)による負担となっていた。在院日数の延長(37日)による医療機関の潜在的な損失は約33万円であった。 したがって、ICU以外で発生した院内感染の医療費は、ICUで発生した場合よりも全体で約70万円増加していた。また医療機関による負担の割合も増加しており、ICU以外で発生した院内感染のほうが医療費の負担が大きい可能性があることが示唆された。ICUの方が院内感染にかかわる総医療費が少ない点については、ICU入室患者においては患者に対して集中的な医療や看護ケアが提供され、感染症の発見や発症後の治療などの対応が早期から適切に行うことに起因している可能性がある。また医療機関の負担割合については、DPCによる1日当たり定額入院料に加えて、特定集中治療室加算が算定されることが大きな影響を与えている可能性がある。一方、ICU内外の院内感染の患者の背景疾患の違いが医療費に影響を与えた可能性もあるため、今後引き続き検討の必要があった。
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