研究概要 |
上肢切断のリハビリテーション(以下, リハ)においては, 切断術後早期に適切なリハを受けられる者は極めて少ないとの指摘があるが, 現状について調査したものは見当たらない. そこで, 上肢切断者が最初に医療と関わる場となる施設において, 義手装着訓練(以下、訓練)を実施する施設との連携状況及び医療職側から上肢切断者への情報提供内容の実態を把握し, 上肢切断のリハにおける課題について明らかにすることを目的として本研究を実施した. 対象は, 全国の救命救急センター及び救急科専門医指定施設, 災害拠点病院, 全国の大学病院, 労災病院, 厚生年金病院, JR医療病院より, 本研究の趣旨の合致する施設として選定した835施設に所属する整形外科医(各1名)とし, 郵送にて自己記入式質問調査票を配付した. その結果, 287名より回答を得た(回収率は34.4%).このうち, 訓練を実施している施設は64施設(N=283, 22.6%)のみであり, 訓練を実施していない施設に所属し, 近隣で訓練を実施できる施設に関する情報を保持していない者は161名(N=195, 82.6%)であった. また, 188名(N=284, 66.2%)が上肢切断に関連する情報は得にくいと感じていた.さらに, 上肢切断のリハのあり方については, 拠点病院を設け, そこで切断術から訓練まで実施するのがよいと答えた者が64名(N=274, 23.4%), 急性期病院と訓練が実施できる病院とで転院連携を図れるシステムを作り, 実施するのがよい答えた者が179名(N=274, 60.9%)おり, 特別なシステムを望む者は243名(N=287, 88.7%)に上った. これらより, 上肢切断者が切断術後, 訓練へと移行しにくい現状にあること、それを改善するようなシステムづくりが必要であること, 情報提供者となるべきはずの医師が上肢切断に関連した情報を得にくい状況にあることが明らかとなった.
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