災害医療活動においては、医療スタッフの現場への搬送、傷病者の被災地からの移送が極めて重要であり、ヘリコプター、車両などの様々な手段による搬送活動を大きなひとつのシステムとして捉えて考えることが必要である。そこで、以下の災害事例を取り上げて研究を遂行した。 1. 高速道路での多重事故を想定したシミュレーションプログラムに構築し、事故発生から各機関の連絡、出動、現着、傷病者搬送といった流れを組み込んで、待ち時間、到着時間、搬送隊の到着間隔などを出力するとともに経済的視点からの評価を試みた。その結果、ヘリコプターが参加することで死亡リスクが低減され、大きな経済的効果が期待されることが明らかとなった。2. 国内空港における航空機事故における傷病者搬送活動についても、搬送時間や待ち時間などから、傷病者の抱えるリスクについて定量的に評価することを試みた。その結果、国内空港においては、市街地から離れ、かつ大型機の離発着が多い空港のリスク低減に、ヘリコプター搬送は有用であることが示された。3. 災害時においては、市民自らによる搬送活動が行われることが多いが、場合によっては一部の医療機関への過度な集中が生じ、適切な医療を受けられなくなる恐れがある。これを予測するモデルを構築し、傷病者の集中が発生しそうな医療機関を示すとともにその軽減方法について考察した。また、ドクターヘリコプターが普及していくための社会的要因についても考察した。その結果、各県の財政力が要因として大きく利いており、ヘリコプター救急を全国に展開させるためには県の枠組みを超えた取り組みが必要であることを述べた。 これらの内容は、土木・交通工学と災害医学・航空医療の、両分野の学会等での発表を行った。
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