本研究では二次医療圏間の放射線治療の地域格差を明らかにすることを目的として、社会経済的指標とGIS(地理情報システム)を用いた分析を行っている。平成20年度は購入したGIS解析ソフトウェアを用いて、放射線治療資源分布について解析をおこなった。また、放射線治療を行うスタッフの地域偏在を測るため、放射線治療を行う診療放射線技師と、医学物理士についてGini係数とローレンツ曲線を用いた分析を行った。その結果、各都道府県ごとのスタッフ数には偏りがあるものの、治療件数あたりの各都道府県の放射線技師の人数は概ね均等に分布していることが明らかになった。一方で、医学物理士は診療放射線技師に比べて地域偏在があった。また、統計調査を利用した分析を行ったことにより、今後、国として調査すべき統計データについても示唆することができた。これらの研究成果は平成21年4月の日本放射線技術学会総合学術大会で発表した。 上記の結果は放射線治療資源の偏在を解析したものであり、スタッフの充足を評価したものではない。そのため、今後は業務内容や時間の要素を取り入れた分析を行い、スタッフの必要人数を踏まえた偏在評価を行う必要性があると考えられた。平成20年度は基礎調査として弘前大学において研究打ち合わせと業務分析に関するヒアリング調査を行った。これまでに放射線治療分野においては地域偏在について分析を行った報告はほとんどなく、本研究の成果は、政策評価指標のひとつとして利用できると考えられる。最終年度である平成21年度は、放射線治療の業務内容を含めた分析を行う予定である。
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