本研究では二次医療圏間の放射線治療の地域格差を明らかにすることを目的として、社会経済的指標とGIS(地理情報システム)を用いた分析を行っている。平成21年度は、患者の受療行動と放射線治療資源の分布との関連を調査することを目的として、千葉県が行った平成元年、平成11年、平成16年の医療実態調査データを二次医療圏・性・年齢層・疾患別に分類整理し、悪性新生物とその他の疾患との間に患者の受療傾向に違いがあるかを調査した。この分析によって、地理情報システムのデータを用いて、患者の受療行動と放射線治療資源の分布との関連を調査することが可能となり、患者の受療行動に関する指標を地域格差に関する研究に適用することができると考えられる。 また、平成22年3月に公表された平成20年医療施設調査の結果では、放射線治療に関する公表データが充実し、位置決め装置や治療計画装置、高精度照射装置の保有に関する項目が増えた。これにより、都道府県や二次医療圏単位に、施設数、機器台数、患者数をより詳細に解析可能になった。特に、高精度照射装置に着目すると、13県で保有していなかった。このなかで、放射線治療を行う施設と機器台数が比較的多いにも関わらず高精度照射装置が無い地域と、施設と台数が比較的少なく、高精度照射装置が無い地域に分けられた。これについては、現在、データ解析を行い、前年までに得られた結果の再整理を進めているところだが、この結果は医療資源の導入あるいは集約のための基礎資料となると考えられる。 今年度はこれまでに行った二次医療圏ごとの放射線治療に関する医療資源の分布の研究成果を論文誌に投稿する準備をすすめた。上記の結果がまとまり次第、論文誌へ投稿する予定である。
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