われわれは、大腸癌細胞株DLD-1に対してクルクミンの約30倍以上の増殖抑制活性を有する新規化合物GO-Y030を同定したことは既に報告している。このGO-Y030および既存の抗癌剤を用いてTP53のステータスの異なる複数の癌細胞株に投与し、IC50値を算出してTP53ステータスと細胞増殖抑制効果との相関性についての検討した。 【結果】GO-Y030のIC50値は、大腸癌細胞株DLD-1(p53mut)に対し0.25μM、 HCT116(p53+/+)に対し0.25μM、HCT116(p53-/-)に対し0.25μMといずれのcell lineでも同等であった。3種類の大腸癌細胞株においてTP53のステータスとIC50値に関連性は示唆されなかった。また、骨肉腫細胞株でもSaOS2(p53 nul1)に対し0.20μM、U20S(p53 wild type)に対し0.20μMと、TP53のステータスとIC50値に関連性は示されなかった。 【結果2】5-FUのIC50値は、 DLD-1に対し2.0μM、 HCT116(p53+/+)に対し2.5μM、 HCT116(p53-/-)に対し2.5μMといずれのcell lineでもほぼ近似した値であり、TP53のステータスとIC50値に明らかな関連性は示唆されなかった。また、SaOS2では10μM、 U20Sでは10μMと、細胞増殖抑制効果は大腸癌細胞株に対する値と比べ弱いものであった。 以上から、クルクミン誘導体または既存抗癌剤の感受性とTP53ステータスとの明らかな関連性は示されなかった。今後、新規クルクミン誘導体と5-FUとの併用による、細胞増殖抑制に対する相加・相乗効果、5-FU耐性癌細胞株へのクルクミン誘導体投与による耐性解除効果、p53導入による細胞増殖抑制効果について検討する予定である。
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