研究概要 |
これまで、生体内の内因性物質や薬物の膜透過機構について、バイオイメージングに関する研究はあまり進展していない。申請者は、新規蛍光プローブの合成あるいは検出系の確立等、トランスポーター輸送のリアルタイムイメージングに関して検討した。 既に調製済みの7-nitrobenz-2-oxa-1, 3-diazole(NBD)標識胆汁酸及びDY-675標識したケノデオキシコール酸(CDCA-DY-675)に加え、Cy5標識ケノデオキシコール酸(CDCA-Cy5)を合成した。本化合物を用いて、有機アニオントランスポーターであるOATPIBIおよびOATPIB3を発現させた細胞における輸送実験を行ったところ、両トランスポーターの基質とならないことが明らかとなった。 続いて、OATP1B1およびOATP1B3により輸送が確認されているNBD標識胆汁酸を蛍光プローブとして、セルファンクションイメージャーによる、輸送イメージングを画像解析した。その結果、OATPIBI細胞においてはNBD標識リトコール酸が、OATPIB3発現細胞においてはCDCA-NBDが最も濃縮的に取り込まれ、取り込まれた蛍光プローブは、細胞質に存在することが明らかとなった。また、同一細胞における経時的な取り込み量の増加(細胞内シグナル/バックグラウンド比の増加)が視覚的に確認された。阻害剤添加時には、それらの感受性に依存して取り込み量の低下が観察された。 以上の結果、申請者は蛍光プローブを用いた小分子輸送を視覚的にかつ経時的に捉えることに成功した。本研究成果により、生きた細胞のままトランスポーター機能を評価することが可能となったことから、これまで明らかにされていない駆動力等の輸送機構解明やそれぞれの個々の細胞における輸送特性解析に応用できるものと考える。
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