研究概要 |
スタチン系薬剤は本来の血清コレステロール以外の作用機序で心血管保護効果を有すること(pleiotropic Effects)が知られている。そこで本申請課題では血管に焦点を当てスタチンのpleiotropic Effects発現に至るAktを中心としたシグナルネットワークをプロテオーム解析にて明らかにすることを目的とした。本実験に先立って19年度は実験系の構築を行った。1)in vitroの解析:材料として,ラット頸動脈由来血管内皮細胞を用いた。スタチンはプラバスタチン(1μM),ピタバスタチン(10n:M)を使用した。内皮細胞にエピトープタグ(strepタグ)を付加したAktを発現させ,アフィニティー精製を行ったのち,結合タンパクをMALDI-TOFにて同定した。その結果,スタチンに刺激によってAktへの結合量が増加するもの,減少するものを複数確認した。うち,比較的量の多い分子を同定した結果,複数の熱ショックタンパク,骨格系タンパク質であった。さらにmTORなどのシグナル関連分子も抗体にて結合を確認した。2)in vivoの解析:当初,ラットの頸動脈に対する遺伝子導入を考えていたが,条件検討の結果,得られるタンパク量が少なく,インタラクトーム解析まで進めることが困難であったことから,マウスの下肢虚血モデルへと変更した。スタチン系薬剤はマウス下肢虚血に対する血管新生を促進することが報告されている。モデル作成1時間後にAktのリン酸化を認めたことから,本モデルを採用した。Aktウイルスを筋肉注射した後に大腿静脈を切除し,血管新生モデルを作成した。アフィニティー精製の結果,同定した結合分子はvitroの結果と一部一致した。現在Aktインタラクトーム解析を施行中である。
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