研究概要 |
自己免疫陸肝炎は難治性肝疾患の1つであり、その発症機序及び炎症持続の原因として、自己肝細胞に対する免疫寛容破綻および自己に対する過剰な免疫反応が考えられている。近年、自己免疫性肝炎症例において制御性T細胞やIL-10産生低下など報告されているものの、まだ原因解明には至っていない。国内で最も多いとされる慢性肝炎であるウイルス性肝炎症例において、樹状細胞(dendritic cells : DC)の機能低下が報告されていることや免疫寛容破綻原因としてT細胞とDC間の免疫不応答の不全があることからも、自己免疫性肝炎でもDCが関連している可能性が十分考えられたため、昨年度は自己免疫性肝炎モデルマウスでの肝及び脾DCの経時的解析を行った。その結果、肝臓ではplasmacytoid DC(pDC)が消失し、逆にconventional DC(cDC)及びco-stimulatory分子の増強も認めた。さらに、これらDCは炎症性サイトカインであるIL-12p70,TNFα,IL-6,MCP-1の多量な産生を認めた。以上の結果から自己免疫性肝炎モデルの肝障害には活性化したcDCが関わっていることと、また、この肝障害をコントロールするには肝臓内の消失したpDCが必要である可能性が示唆された。そこで、当該年度は肝障害をコントロールする機序に焦点を当てた研究を行った。その結果、自己免疫性肝炎モデルに正常マウスの肝及び脾から採取したDCを移入すると、肝DCを移入したときのみ肝障害が部分的に抑制された。また、このときには肝臓内には調節性T細胞の増加を認めた。このことから、自己免疫性肝炎の肝障害のコントロールには肝DC、特にpDCが部分的に必要であり、その抑制機序には調節性T細胞も必要である可能性が示唆された。よって、当該年度の研究からDC移入による自己免疫性肝炎の肝障害コントロールという新たな治療法への基盤を築いた可能性が示唆された。
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