研究概要 |
緑膿菌は易感染性宿主の主要な病原菌であるが、近年薬剤耐性化傾向が強まっており、多剤耐性緑膿菌(MDRP)やメタロ-β-ラクタマーゼ産生緑膿菌(MBLPA)は高度先端医療を行う施設において脅威となっている。わが国で比較的頻度高く検出されるMBLPAとMBL非産生MDRPとの比較は十分行われておらず、多施設共同研究により、MDRPの検出状況の把握、MDRPの遺伝学的背景および予後因子、更にはMDRP感染のリスクファクターの検討を行った。合計52例(Case MBLPA15例、Control MBL非産生MDRP37例)の患者について比較検討を行った。検出検体では、Control群で気道系検体からの検出が多く、Case群では部位の特徴はみられなかった。Case-control研究では、平均年令、性差、悪性腫瘍、心疾患、呼吸器疾患、腎機能障害等の背景因子に差はみられなかった。検出前、抗菌薬使用状況では、従来MBLPAのリスク因子として関連が深いと報告されてきたカルバペネムは有意差無く(40% vs 19%, P=0.11)、キノロン型抗菌薬のみ有意差がみられた(53% vs 16%, P=0.11)。他のリスク因子では、尿道カテーテル(73% vs 49%, P=0.13)以下、有意な因子は見いだせなかった。また、MBLPA症例においては、有意にその感染症において予後に関与していた(36% vs 0%, P=0.003)。以上より、MBLPAのリスク因子として、キノロン系抗菌薬が有意の因子となり、キノロン投与後の患者での緑膿菌においてはMBLPAの可能性を十分考慮に入れる必要がある。加えて、MBLPA含むMDRPの治療薬として最近注目を集めるColistinについて、血液疾患患者に発生した重症MBLPA感染症治療成功例について報告を行った。
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