血中タンパクの大部分が糖タンパクであり、糖鎖末端に結合するシアル酸によりミクロヘテロジェニティが形成される。この多様性の程度と病態との間には密接な関係があることが示唆され、詳細な解析を行うことで新たな病態マーカーを見出せる可能性がある。当該年度における研究実施計画としてな、臨床的有用性をもつ可能性のある血中シアロ糖タンパクを見出すために、まずはプロテオミクス的手法を用いた解析方法の確立を目指した。 1)試料の前処理方法:試料として血漿を用いるため、最初に試料の前処理法を確立した。血中タンパクの8割以上を占めるアルブミン、IgGなどのアバンダントなタンパクを効率的に除去するために、Agilent社製のMultiple Affinity Removal Spin Cartridge(MARS)システムを採用し、アルブミン、IgGだけでなく、IgA、フィブリノーゲン、α_1-アンチトリプシン、トランスフェリン、ハプトグロビンの計7種類のタンパクをあらかじめ除去することとした。次に、シアル酸含有糖タンパクの解析を目的としているため、ノイラミニダーゼによるシアル酸の酵素的除去法の最適化条件を検討した。さらに、二次元電気泳動の-次元目として等電点電気泳動を行うのに最適な試料の脱塩方法についても検討を行った。 2)二次元電気泳動法:現時点では、まずは血中シアロ糖タンパクを網羅的に解析することを目的として、二次元電気泳動の条件の確立を目指した。ノイラミニダーゼ未処理試料について二次元電気泳動を行うと、タンパクの大部分は中性域に存在するため、一次元目の等電点電気泳動のpHレンジを3〜10のノンリニアタイプとし、長さ13cmのドライストリップを用いることとした。二次元目のSDS-PAGEについても網羅的な解析を行うにあたり必要十分な条件として、アクリルアミド濃度を10%とした。1枚の二次元電気泳動ゲルにアプライするタンパク量を100μgとしたことから、タンパクの検出は、スポットを感度良く検出するために、汎用されるCBB染色ではなくコロイドCBB染色により行うこととした。スポットの解析は二次元電気泳動解析ソフトを用いて行うこととした。 当該年度においては、試料の前処理方法ならびに二次元電気泳動条件を確立できた。二次元電気泳動により検出したスポットについては、これから質量分析装置を用いたプロテオミクス的手法により同定を行っていく。
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