研究概要 |
平成21年度は、過去2年間かけて確立した血漿を試料としての二次元電気泳動法を駆使し、健常者27名分(男性11名、女性16名、21~59歳(平均40.4歳))のEDTA加血漿を用いて、血中シアロ糖タンパクの網羅的比較を行った。このとき、健常者間で量比の変動が著しいタンパクは、患者群との比較を行う際の疾患マーカーとしての候補には成り得ないと考え、まずは健常者群内での比較・解析を行うことにより疾患マーカーの候補タンパクを探索した。まず、EDTA加血漿からアバンダントなタンパクを除去後、ノイラミニダーゼ処理前後での二次元電気泳動を行った。次いでCBB染色後の電気泳動ゲルを二次元電気泳動画像解析ソフト(PDQuest)を用いて非常に数多く存在する血中シアロ糖タンパクを詳細に比較・解析した。これまで同定(マッピング)できていなかったタンパクについては、その都度、LC-MS/MS分析により同定を行った。その結果、疾患マーカー候補として、Adipocyte plasma membrane-associated protein (BSCv protein), Afamin, Alpha-1-microglobulin (Protein HC), Alpha-1B-glycoprotein, ApolipoproteinD, Apolipoprotein-L1, Beta-2-glycoprotein I (Apolipoprotein H), Gelsolin, Glutathione peroxidase 3 (GPx-3), HepatQcyte growth factor-like protein (Macrophage stimulatory protein, MSP), Histidine-rich glycoprotein (Histidine-proline-rich glycoprotein, HPRG), Leucine-rich alpha-2-glycoprotein, Zinc-alpha-2-glycoproteinなどが挙げられた。これらほぼ全てのタンパクは、従来の臨床検査項目として日常的には測定されることはない、血中には微量にしか存在しないタンパクばかりであった。今後これらのタンパクについて、各種疾患群との比較を行うことや糖鎖修飾(特にシアル酸修飾)を詳細に解析することで、それぞれのタンパクにおける臨床的意義が見出される可能性は高く、今回行った血中シアロ糖タンパクについての二次元電気泳動による解析の有用性を物語る結果となった。
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