研究概要 |
造血幹細胞移植(HSCT)は血液悪性疾患を中心とした各種疾患の根治療法として本邦でも広く施行されている。移植成績の向上から長期生存者の数が増え、移植後晩期合併症が注目されるようになった。晩期合併症のなかでも重要度の高い二次性悪性腫瘍(二次癌)の本邦における頻度・リスク因子の検討を行うことが本研究の目的である。 2005年度までに日本造血細胞移植学会全国調査(成人領域)に報告された19,172件の造血幹細胞移植で「二次癌」の項目が「あり」と報告されたものに関して、自由記載形式で記載された二次癌に関する情報を2006年度から造血細胞移植登録一元管理プログラム(TRUMP)を用いた電子化登録の新調査形式項目と一致させるための研究を行なった。記載情報をPosttransplant lymphoprolierative disorder(PTLD)、固形腫瘍、増血器腫瘍に分類し、固形腫瘍ではさらに病名・組織名・臓器名に、増血器腫瘍ではさらに病名の項目に該当する情報への変換を行なった。記載されていた情報が不十分であり、十分に変換されなかったものが15%存在した。過去に本邦で施行された809人を対象とした解析での頻度は移植後5年の時点で1.9%、10年の時点で4.2%である。このような発生頻度の、しかし重要な合併症の調査においては大規模の調査が必須であるが、その中の報告漏れ、あるいは報告情報の不足による欠損データは、本研究結果に多大な影響を与えうる。したがって、引き続き入念な情報内容の確認と調査を予定している。
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