研究概要 |
造血幹細胞移植(HSCT)後の二次性固形腫瘍に関して、成人血縁者間移植患者を対象に頻度およびリスク因子の検討を行った。 2007年までに初回血縁者間HSCTが実施され、日本造血細胞移植学会全国調査に報告された16歳以上の成人9388例(移植年1974-2007年)を対象とした。移植時年齢中央値は40歳(16-74)、男性59%、原疾患は急性骨髄性白血病33%、急性リンパ性白血18%、慢性骨髄性白血病15%、リンパ腫11%、その他23%であった。ドナーは同胞が86%、その他血縁11%、不明3%で、HLA一致が79%、不一致が15%、不明6%であった。骨髄破壊性前処置(MA)が76%に行われ、54%が全身放射線照射(TBI)を受けた。 80例において二次性固形腫瘍が確認され、移植後1年以内の発症が12例に認められた。累積発症率は5年において0.6%(95%信頼区間[CI], 0.5-0.8%)、10年において1.2%(95%CI, 0.9-1.5%)であった。5例において2種類の固形腫瘍の発症が見られた。日本人の一般人口データとの比較では、発症リスクは一般人口と比べ有意に高く(標準頻度比(SIR)=1.3, 95%CI, 1.1-1.6)、特に口腔癌(SIR=12.5, 95%CI, 7.7-19.1)、食道癌(SIR=6.4, 95%CI, 3.3-11.2)におけるリスクが高かった。移植後1年以上生存した患者5776例での二次性固形腫瘍発症リスク因子の検討では、TBI、慢性GVHD含め有意なリスク因子はなかった。 癌腫によっては一般人口に比べて高頻度の発症率であることを示したことは大きな意義がある。移植後患者のフォローにおいて二次癌の可能性を念頭に置いた対応が必要であること、さらに定期的なスクリーニングの必要性を示した。非血縁者間移植も含めた解析を今年度予定している。
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