女性ホルモンが接触アレルギーを増悪化する機構を解明するため、動物を感作した後に生じるリンパ球の増殖を検討した。3週齢の雌性BALB/cマウスから卵巣を摘出し、17β-estradiol (E2)を3.2μg投与および3%4-ethoxymethylene-2-phenyl-2-oxazolin-5-one (OXA)溶液を50μL塗布して7日間飼育後、腹部大静脈から血液を100μL採取し、溶血および洗浄後、各種蛍光標識抗体を添加して室温暗所で30分間静置してPBSを用いて洗浄し、氷中に保存してフローサイトメトリーで解析した。メモリーCD8^+細胞の指標となるCD8^+CD45RA^-CCR7^+の表面抗原タンパク質を有する細胞を計数した結果、E2投与群における存在比が非投与群における存在比よりも大きかった。またエフェクターメモリーCD8^+細胞の指標となるCD8^+CD45RA^-CCR7^-の表面抗原タンパク質を有する細胞を計数した結果、E2投与群における存在比が非投与群における存在比よりも大きかった。E2がメモリーCD8^+細胞の存在比を増加させる機構を検討するため、E2投与およびOXA塗布の直前に1%DMSOを含む1mg/mLインドメタシン-オリーブオイル溶液を5mg/kgとなるように皮下注射して同様に解析した結果、E2はメモリーCD8^+細胞を増加させ、インドメタシンはそれを抑制しなかった。以上のことから、ナイーブCD8^+細胞からメモリーCD8^+細胞への分化およびセントラルメモリーCD8^+細胞からエフェクターメモリーCD8^+細胞への分化をE2が促進する可能性が示唆された。またその作用機構はインドメタシンで抑制されなかったことから、プロスタグランジン類を介さない可能性が示唆された。
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