研究概要 |
【目的】針刺し切創防止には安全な器材や作業環境,手順の標準化など重要とされ,職員の安全確保に関する方針や針刺しを報告風土などの安全文化の役割について関心が高まっている。そこでH19年度の研究の一部として針刺し経験の有無,管理職/非管理職の相違によって安全文化評価結果が相違するか評価した。【方法】地域中核病院の看護師(480名)を対象に自記式質問票調査「針刺し切創防止に関する職場組織の安全文化(Workbook for Designing, Implementing, and Evaluating a Sharps Injury Prevention Program, Appendix A-2, CDC, 2004の日本語訳,吉川ら)」の尺度10項目をそれぞれ5件法にて回答を求めた。有効回答415名(回収率86.5%)を対象に各項目得点を分析・比較した。【結果】9つの尺度で平均得点が対策への好意的な評価としての指標基準の3.0を超えた。針刺し経験有無別比較では「職員安全の優先度」のみ針刺し経験群でスコアが低く有意差を認めた。管理職/非管理職間の比較では「安全課題の重視度」「充分な廃棄容器」「安全器材」「ミス・危険報告の推奨」「管理部門の迅速な対応」はいずれも管理職群は非管理職群でスコアが高く有意な差を認めた。「職員安全の優先度」「人事考課」「管理部門と職員が一丸」「トレーニング機会」「報告しやすさ」では差がなかった。【考察】管理職/非管理職,針刺し経験の有無が安全文化評価尺度結果に相違を与える。今回の対象病院では針刺し切創予防は環境整備に比して安全への総合的取り組みとトレーニングとの相対的遅れが指摘できた。介入優先課題として1)現場の作業者のニーズにもとづく針刺し切創防止の器材や設備の普及,2)針刺し切創経験者への個別のアプローチでなく組織的対策の積極的推奨が重要,3)非管理職,針刺し切創経験者が参加できる防止計画の作成が重要と指摘できた。【その他の成果】安全器材の効果評価研究,国内229病院の針刺し切創プログラムに関する評価研究等の成果を国際学会などで公表した。
|