研究概要 |
作業環境における粉じんのうち,バイオエアロゾル(空気中に浮遊する生物由来の粒子状物質)は感染症やシック・ビルディング症候群,マイコトキシン(カビ毒)等による健康障害の原因となる可能性があるが,他の粉じんに比べてその曝露状況の把握は十分ではない。そこで,作業環境におけるバイオエアロゾルの発生状況(曝露状況)の把握,健康影響の把握,ならびに測定方法の検討を目的に研究を行った。本年度は,昨年度までの結果を踏まえつつ,実際の作業現場における測定を実施した。 (1) 空中に浮遊する真菌のサンプリング・集落濃度測定方法については様々な方法が検討されてきたが,現時点では統一されていないため,どのような方法を採用するかをあらかじめ検討しておく必要がある。サンプリング器具ならびに培地についての検討を行った結果,多孔式慣性衝突型サンプラーとジクロラン・グリセロール寒天培地(DG-18)の組み合わせにて空気環境中真菌のサンプリングならびに集落の計測が良好に行われることが確認された。 (2) カビの曝露が懸念される作業場の一例として,大学施設,古書取り扱い作業ならびにリフォーム作業におけるカビ浮遊状況の調査を実施した結果,リフォーム作業中には高濃度のカビが空中に浮遊し,作業者が曝露される可能性があることがわかった。 (3) 昨年度までに調査を行った大学施設ならびに古書取り扱い作業場において採取されたカビの同定作業を行った結果,それぞれの環境において曝露されうるカビの種類を特定することができた。
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