研究概要 |
非小細胞肺がん(NSCLC)は組織型による腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌に大きく分類されているが,臨床上はNSCLCとして一括して取り扱われている。近年上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子異常の有無により,NSCLC患者の背景因子・臨床上の特徴が異なることが報告され,注目を浴びている。EGFR遺伝子異常の有無により,がん罹患リスク要因が異なるか否かを症例対照研究により検証した。353名のNSCLC症例と,1765名の非がん対照者を研究対象とした。半定量的食物摂取頻度調査により,各種食品群の摂取量を推定し,3分位の低摂取群に対し,中・高摂取群のオッズ比を算出した。 EGFR遺伝子変異のないNSCLCでは,緑黄色野菜が防御要因,果物も同傾向を示した。これはEGFR遺伝子変異の無いNSCLCが喫煙によるリスク上昇を認める点と合致した。一方EGFR遺伝子変異の無いNSCLCが喫煙によるリスク上昇を認める点と合致した。一方EGFR遺伝子変異の伴うNSCLCでは,豆類摂取が予防的な傾向を示した。自身が行った過去の研究において,この種類のNSCLCはエストロゲン曝露の代替指標と正の相関を示していたことを考えると,乳がんなどのような,ホルモン関連がんと同様のリスク要因を示していることが観測される。 本研究により,EGFR遺伝子変異の有無により,NSCLCは発生レベルから異なる可能性が示された。喫煙対策などにより防げるNSCLCは本邦における全NSCLCの約60-70%であることが分かった事は,今後の予防対策を立てるうえでも重要な知見である。
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