平成19年度に滋賀県草津市住民より住民台帳法に則り無作為に抽出する40-79歳の男女5に対して冠動脈石灰化測定、頚部エコーによる頚動脈内膜中膜肥厚計測、血液化学検査、NMRリポ蛋白分画、問診アンケート調査、診察室血圧測定を実施した(ACCESS研究)。本研究ではこれらの対象に検査終了後、ICメモリつき自動血圧測定器を貸与しての血圧測定を依頼した。血圧測定の方法については、調査実施時に日本高血圧学会の家庭血圧測定条件の指針に準拠して指導を行い、7日間の測定を実施させ、平成20年3月1日現在、858名のデータ分析を可能とした(データ収集は継続中)。 一般に、住民健診や医療機関等で測定される診察室血圧は、家庭で安静時に測定される家庭血圧と比べ血圧値が高値となることが知られている。しかしながら、十分に安静を保った状態で測定された診察室血圧値で、どうなるかは不明である。そこで本年度は、疫学研究で用いられるような厳密な診察室血圧と家庭血圧の平均値にどの程度の差があるかについて検討した。診察室血圧は、5分間安静、安静時の会話無し、静謐な環境下で自動血圧測定器(BP-8800;オムロンコーリン社)を用いて測定された。家庭血圧は起床後30分以内、排尿後、座位にて最低2分間の安静後で7目問測定された。 分析の結果、診察室血圧の平均値(収縮期血圧137.6mmHg、拡張期血圧80.1mmHg)と家庭血圧値の平均値(収縮期血圧137.6mmHg、拡張期血圧80.6mmHg)に差は無かった。また相関も収縮期血圧、拡張期血圧それぞれ0.73、0.75と高かった。これらの関連は年齢層別に分析しても同様であった。 以上より、厳密に測定された診察室血圧は、家庭血圧と平均値がほぼ一致することを明らかとした。 尚、潜在性動脈硬化との関連については次年度に調査・解析する予定である。
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