性ホルモン濃度、肥満指標および性ホルモン受容体遺伝子多型、それぞれの関連について横断的検討を行った。対象は国立長寿医療センター疫学研究部で実施されている「老化に関する長期縦断疫学調査(NILS-LSA)」の参加者で、性・年代別に層化無作為抽出され、調査への同意が得られた地域在住の中高年男女約2300人である。1997年に調査開始後、2年ごとに追跡調査が行なわれ、2008年7月中旬頃に第5次調査終了予定である。性ホルモン濃度、肥満指標および性ホルモン受容体遺伝子多型を測定し解析を行ったところ、(1)中高年男性では、総テストステロン(T)、遊離テストステロン濃度(fT)濃度と肥満指標(BMI、体脂肪率、ウエスト、皮下脂肪厚)は負の関連をみとめたが、喫煙状況別に検討すると、喫煙者ではfT濃度と肥満指標の関連をみとめなかった。この結果から、喫煙が交絡要因として重要であることを明らかにした。(2)60歳未満の中高年女性で月経の有無別に肥満指標をみたところ、体脂肪率、ウエスト、内臓脂肪面積の値は未閉経群より閉経群で有意に高値であったが、年齢を調整すると有意差は消失し、年齢の影響が大きいことが示唆された。(3)遺伝子多型の違いと肥満指標について検討したところ、未閉経女性ではエストロゲン受容体遺伝子多型(ESR)で内臓脂肪量に、アンドロゲン受容体遺伝子多型(ADR)で内臓脂肪量、ウエスト周囲径に有意差をみとめた。(4)遺伝子多型の違いと性ホルモン濃度については、閉経女性ではESRでT濃度に、未閉経女性と男性ではADRでT、fT濃度に有意差をみとめた。以上の結果より、性ホルモン濃度、肥満指標および性ホルモン受容体遺伝子多型それぞれについて互いに影響を明らかにし、肥満者増加の背景要因の一つを示した。
|