研究概要 |
まず,米国から研究協力者を含む3名の臨床法医学者(1名はmedical examinerで法医病理学者,2名はSANE;性暴力被害者支援看護職)を招聘し,米国での児童虐待や性犯罪被害者への対応について,現役の医療者,医学・看護学生,さらには行政職員等を対象に,講演会等を開催した。こうした情報を広く提供することで,各々が問題意識をもって日々の業務にあたることができると考えられる。 次に,平成18年に米国で受けた性虐待および臨床法医学的診察に関する研修について国内の医学雑誌に報告し,医療者としてのより良い対応について考える機会を提供した。 さらに,関係諸機関との連携を構築するべく,警察・行政・病院等に出向き,情報交換や勉強会などを行った。そして,平成19年度からは滋賀県と滋賀医科大学との間で契約を交わし,滋賀県児童虐待診断指導委託業務を本格的に始動し,書類作成や写真鑑定等を含め,約10件に介入した。その結果,虐待行為を頑なに否認していた保護者らが自らの犯した行為に向き合い,行政等の指導にも従うようになるなど,現時点では全例において問題なく経過している。 また,児童虐待あるいは性犯罪被害者への対応には心理的なケアが不可欠であることから,臨床法医学と心理学との接点について改めて考察し,国内の臨床心理系の雑誌に発表した。同論文が臨床心理士等多くの心理職の目に触れることでさらなる連携につながるのではないかと期待される。最後に,臨床法医学に関する教科書の一部を執筆する機会も得た。
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