研究概要 |
大阪府および大阪市の子ども家庭センターと連携し,臨床法医学的視点から児童虐待被疑事例の損傷鑑定および医学的助言・指導などを年度内に15件行った。こういった事例への関わりを通じて、子ども家庭センタ-職員、臨床の医師・看護師・(医療)社会福祉士等、さらに、場合によっては、所轄警察の担当刑事等とネットワークを構築してきた。また、鑑定書類提出後の児童の措置や心身の状態など、さらに、保護者などの受けとめ方などについても、一部の子ども家庭センター職員や担当刑事等からフィードバックされるようになるなど、信頼関係も構築されつつある。こういった事後の情報提供により、臨床法医学的視点をさらに充実させることができ、今後の鑑定にも生かせるため、さらに、全ての事例についてフィードバックが行われるよう、信頼を獲得していくことが必要であると考えられる。また、裁判などにも出廷して専門家としての意見を述べる機会もあったため、そのような場においても臨床法医学的視点の重要性を示すことができたのではなないかと考える。また、法医学会(主に法医学者からなり、一部臨床の医療者や法律関係者も含まれる)のみでなく、助産学会(主に、助産・保健師資格をもつ看護師からなる)での発表や、虐待に関する雑誌への投稿などにより、虐待が疑われる児童の診察および検査方法などを具体的な事例を挙げながら示すことで、医療あるいは教育現場などでの虐待の早期発見や児童が虐待された結果死亡するといった最悪の事態の回避にもつながる可能性があり、予防的な観点からも貢献できたのではないかと考える。
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