研究概要 |
近年、検屍や法医解剖時における薬物服用のスクリーニングは「トライエージ」等の免疫学的手法を応用した市販の検出キットに依存している現状がある。しかし、市販のキットで検出可能な薬物は乱用薬物や一部の向精神薬に限られており、その他多くの薬物は簡易なスクリーニング法を持たない。本研究は抗体作製にかかる時間の短縮が可能で、多種多様な薬物に対する抗体の同時作製が容易なファージディスプレイライブラリー法を利用した抗薬物抗体の作製を目的とするものである。 抗体ファージライブラリーの構築を行う方法としては、抗原を予め免疫したマウス等から得たリンパ球等を出発材料として調製した免疫ライブラリーが良いとの事から、昨年度において合成したフェノチアジン誘導体(3-アミノ-10-メチルフェノチアジン)を免疫用抗原として用いた。しかし、本誘導体はキャリアタンパクとの複合体形成の効率が悪く、試行的に行ったマウスへの免疫においても強い抗原性を示さなかった。そこで、本年度は下記のように新たにフェノチアジン誘導体を合成した。市販のフェノチアジンをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、氷冷しながらジメチルスルホキシド(DMSO)とTHFの混液(2:1)に懸濁させた水素化ナトリウム(NaH)を加える。アルゴン気流下で30分間攪拌した後、DMSOに溶解した1, 6-ジブロモヘキサンを加え、室温下にて4時間攪拌する。反応液に氷水を加え、ジクロロメタンで3回抽出し、抽出液を硫酸ナトリウムにて脱水する。得られた油状物質をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製した。得られた化合物(β-(10-フェノチアジニル) ブチロニトリル)のシアノ基を水素化アルミニウムリチウムにて還元処理を行って目的物 (10-(4-アミノブチル)フェノチアジン)を得た。現在、これを用いてキャリアタンパク(牛血清アルブミン)との合成を行っている。
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