剖検予定遺体を対象としてCTおよびMRI撮影を行い、死後変化および死因との関連を検討した。検査施行事例は23例で、男性16例女性7例、年齢は0〜88(42.4±23.2)歳、死亡からMRI撮影までの経過時間は6.5〜66(25.7±16.7)時間だった。死因は心臓性突然死12例、吐物(乳)吸引による窒息3例、くも膜下出血、汎発性腹膜炎、敗血症、肺動脈血栓塞栓症、外傷性心破裂が各1例で、他3例が検討中である。 死後変化としてCTで確認されている血管内や肺野の水平面形成(死後の血液・血球就下)は、MRIでも同様に認められた。MRIに特徴的な変化として、大脳基底核がT1強調像で高信号、内包がT2強調像で低信号を呈した。この変化は全事例で認められたが、CTや組織学的検索では大きな変化は認められなかった。変化の程度と死後経過時間に明らかな相関は認められない一方、長時間の脳虚血状態を経て死亡した事例では変化の程度が弱い印象を得た。この他の死後変化としてT2強調画像で脂肪の抑制が認められた。基底核の変化と同様、死後経過時間と脂肪抑制の程度に明らかな相関関係は確認できなかった。詳細な分析のためには、同一死体を用いた経時的死後画像撮影による検討が必要である。 死因診断については、くも膜下出血は画像のみで死因特定可能だった。肺動脈血栓塞栓症、汎発性腹膜炎でも画像のみである程度は死因推定可能だったが、前者では血栓と死後凝血の鑑別、後者では腹膜炎の原因特定のために剖検が必要だった。外傷性心破裂では、画像で大量血胸は確認できたが出血源は特定できなかった。心臓性突然死の死後画像診断も現状では困難である。死後画像が有用な死因検索法であることは確かであり、診断精度向上のためには死体における造影法の確立など、新たな撮像法の検討が必要であろう。
|