近年増加傾向にある性犯罪は、凶悪化や複雑化が進んでいる。特に加害者が複数いる性犯罪などでは、その中から実際の容疑者を特定する為に、より短時間で正確性の高い結果を得ることができる物体検査が要求される。 本研究においては、性犯罪試料をはじめとした男女混合試料を中心に、そこに関与する個人を特定することを目的とし、法医学的個人識別への応用の可能性について検討している。 (1) レーザーマイクロダイゼクション・システムを用いたDNA回収法の確立 ボランティアから提供された膣液に、2~3名分の精液を混合し、試料を作製する。レーザーマイクロダイゼクション・システムを用いて単独回収した精子からDNAを抽出、mitochondrial DNA (mtDNA)の高多型領域の塩基配列解析を行なう。対象試料からの解析結果と比較することで、単独回収した精子から得られたDNAが個人を識別するだけの有用性をもち得るか否かを検討する。また、 (1) 標本染色法が与える影響 (2) 回収DNA量とその質が、DNA抽出およびPCR増幅に与える影響 を中心に、本システムの有効性を検討する。 (2) 様々な混合試料からの個人識別の可能性の検討 上記混合試料に加え、唾液などの体液混合試料について、本システムおよび、mtDNA高多型領域の有用性を評価する。
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