近年、白血病のみならず様々な固形腫瘍における癌幹細胞の存在が報告されている。そこで、申請者らは、インフォームドコンセントの得られた肝癌臨床サンプルからの癌幹細胞分離を試みた。死細胞・非腫瘍細胞を除去した単細胞浮遊液を調整し、複数の幹細胞マーカーに着目してフローサイトメトリー解析を行った。その結果、CD133、CD90陽性細胞分画が、それぞれ11例中3例(0.33-3.56%)、9例中6例(0.84-44.23%)で検出された。しかし、NOD/SCIDマウスに対する異種移植では腫瘍形成は確認できず、今後はより免疫不全の重篤なNOGマウスを使用したり、培養系のspheroid cultureなどを併用して再検討する予定である。 一方で、病理学的検討により、ポリコーム(PcG)遺伝子群タンパクBMI1およびEZH2が、約70%の肝癌において高発現しており、術後再発に関与している可能性を見出した。マウス正常肝幹細胞にBmilを強制発現すると腫瘍形成能が獲得されることや、肝癌培養細胞株において癌幹細胞として機能するside population(SP)細胞がBMI1によって維持されていることから、肝癌における癌幹細胞システムの成立・維持におけるPcG遺伝子群タンパクの重要性が示唆された。
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