研究概要 |
我々は、より効率的なマウス胎仔肝幹細胞の分離を目指したスクリーニングを行い、E13-14 の肝幹・前駆細胞にCD13 やCD133 が強く発現することを見出した。これらの抗原抗体を用いたclone sorting による培養を行なうと、single cell 由来の大型でアルブミン(肝細胞マーカー)・cytokeratin 19(CK19, 胆管細胞マーカー)両陽性のコロニーが形成できた。つまり、CD13 やCD133 陽性細胞が高い増殖能と二方向の分化能を持つ細胞であることがin vitro で示された。また、CD13 陽性細胞を、薬剤および肝切除により肝再生を誘導したマウスに移植することで、生体内で生着・増殖することを示した。 Sall4はES細胞で未分化性維持や分化決定に重要な役割を果たしている転写因子である。Sall4はマウス肝臓由来Dlk+CD45-Ter119-分画のhepatoblast に発現し、成体の肝細胞では発現を認めず、肝発生進行に伴い発現は減少した。Hepatoblast にSall4を強制発現し肝細胞分化を誘導するオンコスタチンMや細胞外マトリクス存在下で培養したところ、肝細胞分化が抑制された。逆に胆管分化を誘導するコラーゲンゲル包埋培養では、CK19+のbranching構造の数と大きさが増加した。一方Sall4をノックダウンするとbranching構造形成が抑制された。胆管障害マウスへSall4強制発現hepatoblastを移植すると胆管へ高率に分化することからSall4はhepatoblastの肝細胞分化を抑制する一方で胆管細胞分化を促進し、hepatoblastの2方向分化決定に重要な役割を担う可能性が示唆された。
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