本研究の目的はDickkopf (Dkk) familyの大腸癌発癌過程におけるDkk familyの役割を明らかにすることにある。DkkにはDkk1からDkk4まで4種類のホモログが存在するが、各々の機能の違いは明確になっていない。われわれは大腸癌で高発現している遺伝子の1つとしてDkk4を見い出し、これに着目して研究を開始した。 大腸癌21症例、腺腫34症例、計55症例の臨床生検検体についてReal Time -PCRを行ないDkk famliyそれぞれの発現量を調べたところ、腫瘍部ではDkk2とDkk4が著明に高発現しており、悪性化に伴い発現が増加していた。Wntシグナルの構成分子であるβカテニンの既知の標的遺伝子であるFrbroblast growth factor 20(FGFZO)の発現とDkk familyの発現を55症例で比べたところDkk4とFGF20に強い相関を認め、Dkk4はWntシグナルにより発現が促進されていると考えられた。これを検証するために培養正常細胞に活性化型変異をもつβカテニンを導入しDkk4蛋白が高発現することを確認。また、生検組織の免疫染色ではDkk4が高発現している癌ではβカテニン蛋白が増加し核への集積が強くなり、Dkk4蛋白も増加していることを確認した。またレポーターアッセイにより、Dkk4が正常細胞のWntシグナル伝達系を抑制する機能を持つことが判明した。 我々は多くの大腸癌においてDkk4およびDkk2が高発現していると結論づけた。このDkk4の高発現は、大腸癌で認められるWntシグナルの亢進によりもたらされると考えられた。Dkk familyのWntシグナル伝達での役割を解析し、大腸癌発癌におけるDkk familyの役割を明らかにすることは大腸癌発生過程の理解とその診断治療法の開発において重要であると考えられる。
|