研究概要 |
昨年度の実験の結果、4%エタノールを長期間投与したPPARαノックアウトマウスでは野生型マウスに比しNF-κBの活性化が強力に生じていることが判明した。そしてNF-κBの活性化により誘導される炎症性サイトカイン・ケモカインや細胞接着因子、酸化ストレスを産生するNADPH oxidase、エンドトキシンにより刺激されるToll-like receptor 4, CD14の発現がPPARαノックアウトマウスで顕著に増加していた。そしてolenehoshatidylcholine(PPC)の共投与にて本マウスで見られた肝炎、肝細胞壊死、アポトーシス、肝線維化は著明に改善していた。 以上の結果を受けて、本年度はPPCの肝保護作用を分子病理学的に解明することを目的とした。上記分子種に加え、アポトーシス・線維化関連遺伝子の発現を定量PCR法、イムノブロット法、免疫染色法を用いて解析した。一連の解析により、酸化ストレスの産生抑制がPPCの肝庇護作用の中枢であることが明らかとなった。またその分子機構は従来の抗酸化剤であるビタミンEやSアデノシルメチオニンとは全く異なるユニークなものであった。酸化ストレスの様々な慢性肝疾患への関与が近年明らかになってきているが、これらの結果は、PPCがアルコール性肝障害の治療薬として、さらには様々な酸化ストレス関連肝疾患の治療薬として臨床応用できる可能性を示唆している。
|