本研究は、慢性障害肝において肝細胞が抗アポトーシスを獲得するメカニズムをスフィンゴ脂質シグナルを中心に明らかにすることを目的としている。肝細胞が抗アポトーシスを獲得するメカニズムとして、クッパー細胞が重要であることを19年度に見出したが、引き続きクッパー細胞におけるスフィンゴミエリナーゼの役割について解析を試みた。まず、スフィンゴミエリナーゼ遺伝子欠損マウスでは、胆管結紮による慢性肝障害モデルにおける肝障害や肝線維化が抑制されることをみいだした。次に、以下の予備実験を行った。薬剤によりクッパー細胞を消失させたマウスにGFP陽性の骨髄細胞を移植し、クッパー細胞が移植された骨髄由来細胞に置換されるかを検討した。骨髄移植後10週目には、肝臓内のクッパー細胞はすべてGFP陽性となっており、骨髄由来細胞にクッパー細胞を置換することに成功した。今後はスフィンゴミエリナーゼ欠損マウスより分離した骨髄細胞を移植することにより、クッパー細胞におけるスフィンゴミエリナーゼの役割についての解析を進める予定である。
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