研究概要 |
Peroxisome Proliferator-Activated receptor(PPAR)は脂肪組織以外にも各種癌細胞などにも多量に発現しており,消化器の分野においても,各種疾患の発症メカニズムや分子標的治療のターゲットとして大いに注目されている。PPARγと消化器疾患に関してはわれわれのグループは世界で先駆的な仕事をしてきたが,とくに大腸に多量に発現していることに着目し,炎症性疾患の治療や大腸癌の化学発癌予防に有用であることを報告してきた。PPARγは大腸上皮に多量に存在するが膵管上皮には少なく、膵癌では高発現していることが知られている。今回の研究では膵癌におけるPPARγの機能解明を目的とした。膵癌細胞Panc-1, Capan-1においてPPARγsiRNAによるノックダウンおよびPPARγ阻害薬は細胞運動と増殖を抑制することがMTT assay,BrdU assayなどこれまでの検討において明らかであったが。Transwell migreation assay,wound-healing assayにおいて細胞運動を検討したところこれらも抑制していることが示された。マウス膵癌ゼノグラフト転移モデルを用いたPPARγ阻害薬の作用検討においては肝転移巣の個数および総体積を抑制してきた。低分子量Gタンパク質の一つRhoファミリーを検討したところ,Cell motilityを調節するRac1,Cdc42が抑制されていたことおよびp-120カテニンの細胞膜への局在変化を認めたことからこれら分子がPPARγの影響を受けている可能性が作用機序として考えられた。PPARγリガンドはそのリガンドがインスリン抵抗性改善薬として世界中で臨床応用されているが,膵癌のみならず大腸癌,乳癌,前立腺癌などにおいても抗腫瘍効果が示唆されている。阻害薬については安全性の確立がされておらず今後十分な検討が望まれる。
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