研究概要 |
昨年度の研究において,ヒト肝細胞癌組織における酸化ストレスの程度とその他の因子との関連について検討した。結果,酸化ストレスの増加にともない肝癌細胞のテロメア長は短縮,テロメラーゼ活性は増加していることが明らかとなった。また,酸化ストレスの程度が強く,テロメラーゼ活性が増加している肝細胞癌組織では増殖活性の増加とアポトーシス耐性の傾向があることも判明した。 ・肝細胞癌組織における酸化ストレスの程度の解析:肝細胞癌組織で8-OHdGの免疫染色を行い,その程度を4段階(grade0-3)に分類した結果,全体の77%でgrade1以上の酸化ストレスの増加を認めた。 ・肝細胞癌組織における酸化ストレスのテロメア長への影響:肝細胞癌組織でテロメアPNAプローブを用いた組織FISHを行い,肝癌細胞のテロメア長を測定した。テロメア長と酸化ストレスの程度とを検討した結果,酸化ストレスの増加にともない有意に(P<0.001)テロメア長の短縮を認めた。 ・肝細胞癌組織における酸化ストレスのテロメラーゼ活性への影響:肝細胞癌組織を用いてhTERTの免疫染色およびTRAPassayを行い,肝細胞癌のテロメラーゼ活性の程度を評価した。テロメラーゼ活性と酸化ストレスの程度とを検討した結果,酸化ストレスの増加にともない有意に(P<0.001)テロメラーゼ活性の増加を認めた。 ・肝細胞癌組織における酸化ストレスおよびテロメラーゼ活性の癌病態への影響:肝細胞癌組織における酸化ストレスの程度と組織学的分化度とのあいだには有意な関連を認めなかった。Ki67の免疫染色で増殖活性,TUNEL法でアポトーシスの頻度を評価したところ,酸化ストレスの程度が強い組織(grade2-3)ではテロメラーゼ活性の程度により増殖活性・アポトーシスの頻度に有意差(P<0.05)を認めた。 現在,ヒト肝細胞癌組織において酸化ストレスによるテロメラーゼ活性増強の機序について,免疫組織化学の手法やin situhybridizationを用いて検討している。
|