研究概要 |
特発性門脈圧充進症の動物モデル作成の目的で,connective tissue growth factor(CTGF)遺伝子の肝臓への導入を検討した。動物として7週齢SPF/VAF雄性ラット(Wistar系)に静注し,遺伝子導入を行った。アデノウイルスへの遺伝子導入はAdenovirus Expression Vector Kit(Takara Biochemical)を用いて行った。human CTGFのmRNAからcDNAを作製し,コスミドベクターのEl領域に導入し,CTGF組み換えアデノウイルス(adeno-CTGF)を作製した。ゴントロールとして大腸菌のβ-galctosidse遺伝子を導入したアデノウイルスベクター(adeno-LacZ)を使用し,さらにTGF-βおよびthiacetamide(TAA)との併用効果を調べるためTGF-β+adeno-CTGF,TGF-β+adeno-LacZ,TAA+adeno-CTGF,TAA+adeno-LacZの組み合わせにより肝組織を検討した。ラット肝からのcDNAをPCR反応にて増幅し,CTGFの肝臓での発現を調べた。adeno-CTGF投与3日目の肝臓にはCTGFを示す120bpのbandを認めたが,7日目,14日目およびadeno-LacZ投与3日目の肝臓では認めず,CTGFの遺伝子発現は一過性であった。投与3日後の血清中AST値,ALT値を測定した。AST値はPBS群73.1±12.71U/L,adeno-LacZ群76.3±20.2IU/L,adeno-CTGF群77.5±15.11U/Lであり3群間に有意差を認めなかった。ALT値はPBS群19.6±3,81U/L,adeno-LacZ群19.1±5.31U/L,adeno-CTGF群20.5±4.81U/Lであり3群間に有意差を認めなかった。adeno-CTGF+TGF-β投与7日目,adeno-LacZ+TGF-β7日目,adeno-CTGF+TM投与7日目,adeno-LabZ+TAA投与7日目の肝組織について検討したが,線維化の程度,炎症の程度にはいずれも著変を認めなかった。以上より,CTGF組み換えアデノウイルスの単回投与では遺伝子導入による肝内CTGFの発現は一過性であり,肝機能検査および肝組織の有意な変化は認められなかった。
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