肝細胞癌患者のほとんどが肝硬変あるいは線維化の進行した慢性肝炎を合併しているため、全身状態の悪化から集学的治療を十分に行うことができないことが多く、副作用が少なく、かつ効果のある治療法の開発が急務である。そのような観点から免疫療法が注目されており、様々な腫瘍抗原を標的とした免疫治療法が検討されている。MAGE-1抗原、Glypican-3抗原、NY-ESO-1抗原はいずれも腫瘍抗原として広く知られており、肝細胞癌においてもそれぞれ約70%、70%、30%と高い頻度で発現があるとの報告がある。将来的な肝細胞癌免疫治療の確立のため、まず我々は上記3種の腫瘍抗原に対する腫瘍特異性T細胞応答を肝細胞癌治療前後において比較検討した。 MAGE-1、Glypican-3、NY-ESO-1各腫瘍抗原のアミノ酸配列からオーバーラッピングペプチド(20-mer)を作製した。これまで17例の肝細胞癌患者を対象として治療前後において新鮮末梢単核球よりCD8陽性細胞を分離し、作製したペプチドに対するIFN-γ産生能についてELISPOT法を用いて評価した。肝細胞癌患者の末梢CD8陽性T細胞をMAGE-1、Glypican-3、NY-ESO-1ペプチドで刺激した結果、治療前後のいずれかにおいて17例中10例で免疫応答を認めた。この結果を踏まえて、本研究では肝細胞癌に正常に比較して高いレベルで発現があると知られるこれらの蛋白分子の中から、今までにあまり報告のない肝細胞癌のT細胞抗原エピトープの同定を試みる。エピトープの同定については現在解析中である。
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