カハールの介在細胞(Interstitial cells of Cajal ; ICC)は、消化管運動におけるペースメーカーあるいは興奮伝達機構として働く事が知られている。本研究は、回盲部の運動制御機構へのICCの関与を、組織学的特徴から解明していくことを目的としている。昨年度までに、モルモット回盲部におけるICCの分布様式、形態学的特徴ならびに神経や平滑筋との関係について免疫組織化学的な解析を行ってきた。その結果、回盲部の筋層にも豊富なICCが存在し、回盲部の中でも、さらに部位ごとに分布様式が変異を示すことを明らかにした。また、一般にICCは消化管の筋層に分布すると考えられているが、回盲部のごく限られた領域においては、ICCの特異的マーカーとして知られるKit陽性の細胞が粘膜下層にも存在し、長い突起によって粘膜下神経叢と密接している事を明らかにした。本年度は、ここまでの成果をCell and Tissue Research誌(vol 338 (1) : 29-35)にて報告した。この粘膜下層のKit陽性細胞については、引き続き解析を行い、この細胞の突起が、粘膜筋板あるいは粘膜筋板と輪走筋を結ぶ筋束とも密接していることを明らかにした。また、このKit陽性細胞の機能を解明していくために、神経伝達物質のレセプターであるneurokinin 1 receptor (NK1-R)の発現の有無を免疫組織化学的に解析した。その結果、粘膜下のKit陽性細胞にはNK1-R陽性のものと陰性のものが存在する事が明らかとなった。これらの結果についても順次報告を行っていく予定である。
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