研究概要 |
欧米型,日本型のHBV計3株について,完全長遺伝子をクローニングした。このHBVゲノムをタンデムに結合し,ウイルス発現用ベクターを構築した。Huh7細胞に導入後,細胞内及び上清中のHBV関連抗原の発現を確認した。また,既存のELISAシステムを応用,改変し,HBsAgの定量系を導入した。 HEVは患者便中からRNAを抽出し,完全長ゲノムRNAをcDNAとしてクローニングした。ウイルス蛋白の発現は抗体の問題によりできなかった。そこで,抗体作成のための抗原として利用するため,各種HEV蛋白を大腸菌で発現し精製をおこなった。 次に各種細胞の三次元培養条件について検討を行った。肝癌由来細胞株としてよく研究に用いられているHuh7細胞及びHepG2細胞の三次元培養条件を検討し,温度感受性ゲルでの培養条件を決定した。また,アルブミン産生能,及び薬剤代謝遺伝子の発現上昇等複数の項目について,検討を行い,三次元培養により生体肝に近い機能を有していることを確認した。HEV感染及び複製が報告されているAlexander細胞についても同様に三次元培養条件を検討した。この細胞は三次元培養により増殖速度があがること,またゲルを用いて三次元化した後にはゲルから取り出して低吸着性dishでの培養が可能であることが明らかになった。 以上,H19年度はHBV及びHEVのゲノムのクローニング,及び検出系の確立をおこなった。また,感染実験に用いる細胞にっいて詳細に検討をおこなった。本研究計画の中心である感染性への検討をおこなう準備はほぼ完了したが,HEVについては抗体作製という課題がのこされた。また,HEVの感染及び複製が報告されているAlexander細胞は,HEV複製及び感染がおこらないHuh7細胞およびHepG2細胞とは三次元化した際の増殖速度及びスフェロイド形成後の足場(温度感受性ゲル)依存性に違いがあった。三次元化後の細胞の性質に関与する宿主因子がHEV複製に関与している可能性も考えられる。
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