研究課題
これまでに、培養内皮細胞内においてSVBP(small Vasohibin binding protein)がVasohibinと複合体を形成すると、Vasohibin蛋白の安定化を引き起こし、細胞外への分泌を促進することを示してきた。本年度はSVBPの役割をさらに追及し、分泌作用に関しては、SVBPとVasohibnに対する各特異抗体を用いたELISA法によって、培養内皮細胞により分泌されるSVBP-Vasohibin複合体の濃度を測定し、SVBPの発現量に依存してVasohibinの細胞外分泌量が制御されることを定量的に示した。同時に、細胞外に分泌されたVasohibinの量に依存して血管内皮細胞の遊走が抑制されることを示した。Vasohibin蛋白の安定化に関しては、SVBPとの結合によってVasohibinのポリユビキチン化が抑制され、プロテアソームによる分解から回避することを示した。これまで免疫沈降法や免疫染色法によりSVBPとVasohibinが複合体を形成することを示したが、これらの結果に加えin situ Proximity Ligation Assayによって、細胞の頂端側でSVBP-Vasohibin複合体が集積することを改めて証明した。また、SVBP蛋白中に唯一存在する58番目システインをセリンに変換した変異体SVBP蛋白を作製し、Vasohibin蛋白との結合、安定化および細胞外分泌に対する影響を調べたが、正常SVBPと同等の効果が確認されたためSVBP-Vasohibin相互作用にはシステインを介するジスルフィド結合は関与しないと予測された。以上の結果は、SVBPはVasohibin蛋白の安定化と細胞外分泌を制御し、Vasohibinの抗血管新生効果を発揮する上で非常に重要なパートナー分子であることを示唆している。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
The American Journal of Pathology 176
ページ: 1950-1958
The American Journal of Pathology 175
ページ: 430-439
Blood 113
ページ: 4810-4818
http://www.idac.tohoku.ac.jp/dep/vascbio/