両心室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)を施行した慢性心不全症例に関して、心筋血流シンチを用いてQGS法による左室容積を求め、CRT前後の左室逆リモデリングを検討した。当院で施行した68例を検討するとCRTは82%の症例に臨床的に有用だったが、6ヶ月経過した53例中で左室容積の減少を認めたのは62%であった。左室逆リモデリングを来たした症例ではQRS幅が広い左脚ブロック症例(右室心尖部ペーシング症例を含む)が94%を占めていた。左室逆リモデリングを来たすCRT有効例では、その後の心不全入院や不整脈発作、死亡などの心事故が少ない傾向があった。また、CRTを施行した18例に関してMRIを用いて左室局所壁運動を評価し、17例でガドリニウム造影による心筋線維化の評価を施行し得た。原疾患が非虚血性/虚血性に関わらず、約7割の症例で心筋の線維化を認めた。非虚血症例では心筋中層の線状線維化を認める症例が多かったが、虚血性症例では貫壁性線維化を認める症例が多かった。左室の局所壁運動は、CRT前では早期の心室中隔の内方運動を呈し、組織ドプラーを用いた心エコーでの評価と同様の所見であった。CRT前の最遅延部位はMRIで観察すると心室中隔以外の領域であったが一定の傾向は認めず、症例によって最遅延部位は異なる可能性が示された。各種画像診断法を用いることでCRTの有効な症例を特徴付けることが可能であり、また左室逆リモデリングを来たす有効例の予後は良好であることが示された。
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