研究概要 |
研究室で確立している新生児ラットの培養心筋細胞の実験系(Takahashi H.Circulation 2005.Mar29;111(12):1510-6)をmodifyし、培養心房筋細胞の実験系の確立を目指した。過去のin vitroで報告は、すべてwholeheartの培養心筋細胞の実験系であり、心室と心房ではCx分布も異なっており、心筋細胞も心室と心房では特性が異なるとされている(Gros DB Bioessays 1996;18:719-30,Delorme B Dev Dyn.1995;204:358-371)。従って、その結果はより病態生理学的意義が大きいと期待される。さらに、培養細胞伸展装置の確立を目指した。過去に確立された実験系を参考にし(Yamada K et a1; Circ Res.2005;97: 346-53,Banes AJ J Cell Sci 1985 Apr;75:35-42)、心房筋単離培養と平行して、シリコンプレートを使用した定期的な伸展刺激、cyclic strainを培養心房細胞に加えることが可能な培養実験システムの構築及び電気刺激装置の確立を進めた(Inoue N et al; J Am Coll Cardiol 2004; 44: 914-22)。心房由来の心房筋細胞は、得られる細胞の量が少ないと考えられ、ラットではなく新生児家兎(Japanese white rabbit)を使用した単離培養法の確立を目指し、それにより細胞の量的問題をカバーできると考え、進めてきた。家兎の場合、心臓のサイズがラットより大きい分、酵素学的な細胞分離にやや工夫を要する事が予想されるが、同大学薬理学講座で家兎の心筋細胞単離を行っており、その方法を参考とする(Chu L, Endoh M et a1. Naunyu Schmiedebergs Arch Pharmaco1. 2005;371(3):185-94,Sugawara H, Endoh M et al. J Card Fail. 2000; 6(4): 338-49)。以上の実験系により、strainという伸展する機械的な刺激(心房負荷時の壁応力を再現)と電気生理学的刺激(心房細動時の頻脈を再現)を組み合わせる事によって、心房細動により近い状態をin vitroにて再現できる新しい実験系の確立を進めている。
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