研究概要 |
平成19年度中,2名の重症心不全患者に免疫吸着療法を実施した。第1例目患者は3回の吸着療法中すべてにスワンガンツカテーテルを用いた詳細な血行動態評価を行った。吸着療法施行中はスワンガンツカテーテル検査指標の悪化は認めなかった。また,治療後の感染症,出血傾向の問題もなく,心臓移植の他に有効な治療法のない重度の心不全患者において本治療が安全に施行できることが示唆された。本症例は自覚症状の明らかな改善は認めなかったが,血漿BNP値は治療前1909pg/mlから治療2週後1213pg/mlに,抗β1受容体抗体価は13.4から6.6に低下,LVEFは23%から29.5%に改善を示し,本療法の短期的有効性が期待できる結果であった。第2例目は大動脈内バルーンパンピング(IABP)から離脱できない末期心不全患者に本療法を施行した。欧米での本治療プロトコールの多くは連日計5回の吸着を行うものであるのに対し,我々はより安全性を重視し週1回,計3回のプロトコールで本研究を開始したが,1例目の経験を生かし,第2例目のプロトコールを週2回,計3回に変更し実施した。本療法施行後IABPの離脱に成功し,本治療の有効性が示唆された。 また,日本アフェレシス学会学術大会シンポジウムにて,慢性心不全患者におけるβ1受容体抗体と心臓交感神経機能について,心不全患者における抗β1受容体抗体価と心筋MIBG指標との関連を調べた我々のデータを提示するとともに,本施設第1例目の重症心不全に対する免疫吸着療法の症例報告を行った。
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