研究概要 |
現在まで7例に本治療を行い、高度の低血圧・低心拍出・肺うっ血(及びペースメーカーやICD植え込み術後状態)患者においても有害事象なく治療することができた。本治療により抗β1受容体抗体価(前27.3±11.3, 後17.7±12.3, p<0.01)や抗β1受容体抗体などの抗心筋自己抗体を多く含むとされるIgG3分画の(前74.5±38.2, 後16.0±8.8, p<0.01)有意な減少効果が示され、3例に心不全症状の改善効果が認められた。7例の諸検査指標の解析において左室駆出率(前22.8±6.2, 後29.1±9.1, p<0.05)、心拍出量(前1.71±0.40, 後1.97±0.41, p<0.05)の早期改善効果が認められた。さらに、免疫吸着前後でdROM testにて酸化ストレスレベルを測定したところ、有意な酸化ストレスレベルの改善を示し(治療前393±45U. CARR, 治療後314±58U. CARR, p<0.05)この酸化ストレスレベルは左室駆出率(R=-0.601, P=0.02)および肺動脈楔入圧(R=0.668, P<0.02)と良好な相関を示した。本治療が安全かつ有効であるとのデータが得られ、加えて、免疫吸着療法による酸化ストレス改善効果が観察された。この酸化ストレスレベルの変化は免疫吸着療法自体の効果なのか、あるいは心機能改善に伴う二次的な効果なのかは明らかではない。更に症例を重ねるとともに、この酸化ストレスマーカーと各種サイトカインとの関連についても検討をしていきたい。そしてどのような患者にこの治療がより有効であるのか、この治療が新たな心不全治療法として確立できるよう、治療効果を予期できる指標を探っていく予定である。
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