研究概要 |
最近の研究から、肥大リモデリングは、Ca2+依存性脱リン酸化酵素・カルシニューリンを介した転写因子NFATの脱リン酸化を介した肥大応答遺伝子群の発現によることが示された(Molkentin JD, 1998, Cell)ものの、その原因となるCa2+ハンドリングの破綻を引き起こすメカニズムは未だ不明である。我々はこれまでに、心不全進行過程において、活性化カルシニューリンがNa+/Ca2+交換体の交換活性を阻害するために、細胞内のCa2+が効率的に排出されなくなることを示した(Katanosaka Y. et.al., 2005, J Biol Chem)。また、肥大時に活性化したカルシニューリンが、Na+/Ca2+交換体のリン酸化にどのように影響するか検討してきた(Katanosaka Y. et.al., 2007, Annu. N. Y. Ac. Sci. )。本年度は、カルシニューリンによるNa+/Ca2+交換体のリン酸化調節メカニズムを明らかにするために、心筋細胞あるいはNa+/Ca2+交換体や活性型および不活性型カルシニューリンの共発現細胞等を用いたin vitro実験系を利用し、Na+/Ca2+交換体のリン酸化部位、リン酸化酵素あるいは脱リン酸化酵素の同定を行った。また、病態を誘導する血行動態負荷の違いによって、その後の心不全のタイプ、あるいは発症時期や重篤化にバリエーションが見られることから、血行動態負荷の異なる様々な病態モデルマウスおよびラットを作製し、Na+/Ca2+交換体の修飾状況、活性、発現量の変化を解析した。これらの結果より、病態発症においけるNa+/Ca2+交換体の分子応答は、病態発症に関わる血行動態負荷に大きく影響される可能性があると考えられた。
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