平成19年度において、ウェーブレット解析法による心拍変動・収縮期血圧変動周波数解析による交感神経活動・副交感神経活動をベットサイドでの5分間の計測で可能とする測定系を確立した。これにより数値化された交感神経活動・副交感神経活動が、心不全の重症度であるNYHA分類やBNP濃度と有意な相関があることを確認し、心不全の重症度の指標として有用であることを確認した。さらに、心不全の原因としての虚血性・非虚血性には影響を受けないこと、収縮能低下型と拡張能低下型の違いにも影響を受けないことも確認できた。なお、その過程で、薬物を使用しないシークエンスメソッドによる動脈圧受容器反射測定も可能となり、心不全患者において動脈圧受容器反射が低下していること、さらにその低下が心拍出量低下の極めて有用な指標であることを明らかにした(日本心不全学会・日本循環器学会総会発表)。次に、現在本邦で心不全治療薬として最も使用されているヒト心房性利尿ペプチド(hANP)が、心不全治療において、亢進している交感神経活動を抑制し、減弱している副交感神経活動を活性化することを明らかにした。hANPの効果について、自律神経異常を改善する作用については不明な点が多く、また心不全における自律神経異常、治療によるその改善についての体系だった研究そのものが少ないことからも、意義のある研究といえる。また、動脈圧受容器反射がPDE-III阻害薬の強心作用の予測因子として極めて有用であることを明らかにした。
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