今年度の研究では、ヒト変性弁(加齢変性あるいはリウマチ性)において正常弁に比してペリオスチン発現および血管新生の増加が認められた。In vitroでは、組み換え型ヒトペリオスチン蛋白刺激によりヒト冠動脈内皮細胞の血管腔形成能、遊走能は有意に増加した。 1. ペリオスチンのin vitro機能解析(続き)ラット弁間質細胞を組み換え型ペリオスチン蛋白で刺激した結果、弁間質細胞の増殖能には影響を与えなかった一方、Western blot法にて弁間質細胞によるmatrixmetalloproteinase(MMP)産生・分泌の増加が認められた。 2. ペリオスチン遺伝子欠損マウスの弁の表現型解析野生型マウスに高脂肪高炭水化物食を一定期間投与すると大動脈弁の変性と狭窄をきたすことが知られている。野生型(WT)あるいはペリオスチン遺伝子欠損マウス(KO)に高脂肪食(HF)を4ヶ月間投与した。心エコー上、WT+HF群で大動脈弁は肥厚し大動脈・僧帽弁輪部の高エコー域が約1.5〜2倍増加したのに対し、KO+HF群ではその変化は有意に減少した。同部位の免疫染色では、WT+HF群においてペリオスチン、vWF、コラーゲン1、α-smooth muscle actin陽性領域の増加を認めたが、KO+HF群では有意に軽減しており、Western blotにおいても同様の結果が得られた。以上より、高脂肪食負荷による大動脈弁の有意な肥厚、弁輪部の血管新生・線維化の増加の一因がペリオスチンの発現増加であることが示され、同因子の弁変性作用が確認された。
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