研究概要 |
今回我々は、複数の拡張型心筋症(DCM)マウスに対し2週間毎に計4回の経静脈的骨髄単核球細胞移植を行い、PBS投与群をコントロールとして、その効果及び機序を検討した。骨髄単核球細胞移植3日目には、コントロールに比して有意な左室短縮率の改善を認めたが(骨髄単核球,0.29±0.01;PBS,0.24±0.04,p<0.05,n=6)、その効果は移植14日目には認めなかった。GFPマウス由来骨髄細胞移植の結果では、移植細胞の大部分は末梢血中に存在しており、その後も心臓への遊走および心筋細胞への分化は認めなかった。骨髄単核球細胞移植により、DCMモデルマウスの心筋細胞に有意な肥大を認めた。次に、骨髄単核球細胞を無血清培地で24時間培養した後に培養上清を回収し、新生仔ラット心筋細胞に添加することにより、心筋細胞の細胞短縮率に有意な改善が確認され、また添加群では非添加群に比して培養心筋細胞の肥大を認めた。骨髄単核球細胞は、種々の1ineage細胞及び未分化な細胞により構成される。そこで、マグネットビーズを用いて各分画を選別した後に培養上清を回収し、心筋細胞への添加による、心筋細胞短縮率効果を比較したところ、顆粒球由来培養上清においてのみ、心筋細胞短縮率の改善が認められたが、リンパ球、赤芽球、未分化細胞由来培養上清では改善しなかった。顆粒球由来培養上清の経静脈的投与により、DCMマウスの左室短縮率は骨髄単核球細胞移植と同等に改善した。以上より、骨髄単核球中の顆粒球には、心筋収縮力を増強する増殖因子の産生能が存在すると考えられたため、顆粒球細胞においてより発現の多い増殖因子の発現をMicroarrayにて解析し、複数個の候補遺伝子を同定した。現在、骨髄単核球細胞移植後の、末梢血中の候補遺伝子の発現をELISAで検討するとともに、候補遺伝子の心筋細胞への直接的効果を検討中である。
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